死因贈与契約はあくまで契約 遺言や生前贈与とは違うもの
死因贈与契約とは、「自分が死んだら、誰それに財産を贈与する」という契約です。遺言と似ていますが、法律的には別の概念です。
死因贈与契約の効力を否定したいときはまず書面の有無を確認
死因贈与契約によって、相続財産が全部第三者に渡ってしまう場合があります。相続人としては許しがたい状況だと思います。そのようなときには、死因贈与契約の効力を否定する方法を考えることになります。
・死因贈与契約が書面でなされている場合
死因贈与契約が書面でなされている場合、死因贈与契約の撤回が認められるかについて裁判所の判断は分かれています。微妙な判断になりますので、是非、弁護士にご相談ください。
・死因贈与契約が書面でなされていない場合
死因贈与契約が書面でなされていない場合、撤回することが可能です。したがって、撤回があることを説得的に立証し、裁判所に認めてもらうことができれば、死因贈与契約の効力を否定することができます。
以下は、平成3年6月27日の東京高等裁判所の出した判決です。この判決も死因贈与の撤回を認めています。
民法五五〇条が書面によらない贈与は取り消すことができると定めたのは、遺贈と異なり厳格な方式の定めがない贈与においては、口頭のような簡単な方法で意思表示ができることから、軽率にこれをして後日後悔する事態も考えられるので、それを防止し、また、書面が残されていないため贈与者の真意が不明確になって後日紛争が起きることが考えられることから、それを防ぐことを目的としたものである。
東京高判平成3年6月27日
一方、一般に、贈与者が死亡したときは、その取消権は当然その相続人に承継され、相続人において取り消すことができると解されている。むしろ、この贈与者死亡のときこそ、贈与に書面を必要としたことの趣旨がはっきり表れるといえる。すなわち、贈与者死亡後に口約束で贈与があったと主張され、紛争が生じた場合は、死人に口なしで贈与意思の有無を決し難いことが多いのであって、その場合にこそ、相続人は書面によらないことを理由に取消権を行使して、紛争を防止することができるのである。
そして、なるほど、死因贈与は、贈与者の死後の財産処分という意味で、遺贈とその果たす役割が共通していることは確かであるが、死因贈与も贈与の一種であって、その方式については遺贈のような厳格な要件が必要とされていないのであるから、前記のような五五〇条の立法趣旨はそのまま妥当するのであって、同条の適用を排斥して死因贈与についてだけ贈与者の死後は相続人が取り消すことができないとする理由はない。