借主は借地借家法で保護されている
土地や家を借りる時には主に賃貸借契約書というものを作成します。賃貸借というのは土地や家に限らず、物の貸し借り全般のことを指します。賃貸借契約は民法によって規律されているのですが、どうしても貸主、土地でいえば地主側の力が強くなりがちです。そうなると借主に不利な契約が結ばれてしまう可能性が高くなってしまいます。
そこで、借主を保護するために、「建物を所有する目的」で土地を借りた場合には、借地借家法という法律が適用されます。建物の場合は特に目的の制限なく借地借家法が適用されます。この法律では最低限守るべきラインが決められており、これを下回る契約は無効とされます。馴染みのあるものでいえば、最低賃金に近い制度ともいえます。
特別な契約をしていない限り、家を建てるために土地を借りた場合、建物を借りた場合、借地借家法の適用があります。これにより、借主は強く保護されることになります。
一時使用賃貸借契約は借主に不利になる契約
「特別な契約をしていない限り」といいましたが、借地借家法の一部が適用されない借地契約があります。それが一時使用賃貸借契約です。一時使用賃貸借とは、その名の通り、一時使用目的で締結された賃貸借契約のことです。この一時使用賃貸借となった場合、借主に有利な法律が一部適用されなくなります。
借地、借家にかかわらず、借地借家法では最低限の契約期間が定められています。借地では最低30年、借家では最低1年とされています。しかし、一時使用賃貸借では最低期間の規制がなくなります。つまり借地では10年という契約も認められたり、借家でも6ヶ月という契約が可能になります。借地では土地上に建物を建てる関係上、短期間で退去しなければならなくなるのは費用が多くかかってしまいます。借家でも短期間で引っ越しするのは負担になるかと思います。
また、借地借家法が適用されると、法定更新といって借主が望めば契約の更新が半強制的に認められるようになります。しかし、一時使用賃貸借では法定更新が認められない結果、貸主次第では一回の契約期間だけで追い出されてしまいかねません。
さらに、借地では建物買取請求権という権利の行使が制限されます。借地契約が終わると、原則、借主は建物を取り壊して更地にして返還しなければいけません。建物買取請求権を行使できれば、借主は建物を地主に買い取ってもらうことができます。これを行使すると、取り壊し費用がいらなくなるだけでなく、さらにお金が入ってきて借主は二重に得をします。しかし一時使用賃貸借では建物買取請求権が認められません。
根拠としては借地については借地借家法25条、借家については借地借家法40条に規定があります。
一時使用賃貸借契約か否かの判断には幅広い事情の考慮が必要
一時使用とはいうものの、なにをもって一時使用というのでしょうか。実は、法律には明確に書いてありません。
一時使用目的かどうかの判断には、一般的に、賃貸借契約締結の動機(たとえば、海外出張の間だけ家を賃貸借して利益を得たいときなど)、賃借人の使用目的(たとえば、催し物の会場として土地を賃貸借するときなど)、賃料、期間、使用状況、更新規定の有無、その他契約書の内容などが総合的に考慮されます。
一時使用かどうかは借主にとっては重大な問題であることはお分かりいただけたかと思います。その一方で、一時使用の判断は難しく、専門的知識が必要となってきます。そのため一時使用賃貸借契約に関するご相談は、専門家である弁護士にお任せください。