相続分には3種類ある
数人の相続人が共同で遺産を承継する場合の、各相続人の承継する割合を相続分と言います。そして、この相続分には、法定相続分、指定相続分、具体的相続分という種類があります。
法定相続分 遺言がない場合に法律で定められた相続分
法定相続分とは、相続が始まった際に、遺言で相続分が指定されていない時に、適用されるものをいいます。そして、法定相続分の割合は民法第900条1~4号によって規定されています。なお、以下で述べる、子や配偶者、直系尊属、兄弟姉妹はすべて被相続人から見た関係を指します。
900条1号は子と配偶者(夫、妻)が相続人の場合は、それぞれ2分の1ずつとしています。900条2号は配偶者と直系尊属(父母や祖父母など)が相続人の場合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1としています。900条3号は、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1としています。また、子や直系尊属、兄弟姉妹が複数人いるときは、900条4号によって、2分の1や3分の1といった取り分をその人数で等分するように規定されています。
ただし、900条4号但書には上記についての例外が定められています。父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とするという規定です。
指定相続分 遺言で指定される各相続人の相続分
指定相続分とは、遺言によって指定される、法定相続分と異なる共同相続人の相続分のことをいいます。なお、指定相続分は法定相続分に優先します。また、被相続人が自分自身で指定する代わりに第三者に相続分の指定を委託することもできます。
具体的相続分 特別受益や寄与分を修正して実際に受け取る相続分
具体的相続分とは、各共同相続人が実際に受け取ることになる相続分のことをいいます。これを定めるものとしては、民法903条が規定する特別受益の持戻しと、民法904条の2が規定する寄与分の二つがあります。
特別受益の持戻しとは、被相続人から一部の相続人に対する生前贈与といった、一部の相続人が遺産の前渡しと同視できるような特別の利益を受けている場合に、それを考慮して、法定相続分を修正する制度です。
寄与分とは、一部の相続人が、被相続人の財産の増加や財産の減少防止に寄与したのであれば、その増加分や減少しなかった分は、当該相続人の貢献によるものと考えられるので、その相続人にその分を与えるという制度です。